先日、知り合いの方からこんな質問を受けました。
「オーディオショップでは、プリメインアンプよりもAVアンプの方がたくさん並んで人気のようだけど、これって2chピュアオーディオでも使えるの?」
つまり、彼は一般のコンポを揃えようとアンプを見に行ったのですが、AVアンプばかりが目に付いたのだとか。
特にホームシアターに興味がある訳ではないけれど、AVアンプが人気なので、これを使ってピュアオーディオを構築できないかと考えたようです。
ピュアオーディオたる2chプリメインアンプは、2つのアンプを内蔵しています。
対してAVアンプは5.1ch仕様機なら、フロント用・リア用そしてセンター用モノラルと、5つものアンプを内蔵。
ならば、5つのうち2つしかアンプを利用しないのは、無駄だと思うかも知れませんね。
ところが、これらの4つのアンプを生かせる方法があります。
つまり、バイアンプ接続で音質をアップさせれば良いんです。
と言うことで、今回はAVアンプを使い、2chオーディオを楽しむ意義に付いてお話をしてみましょう。
AVアンプをピュアオーディオに生かすバイワイヤリングとバイアンプ
AVアンプで2chピュアオーディオを構築するには、まず最初にある条件を満たさないといけません。
それは使用するスピーカーシステムが、バイワイヤリングに対応するモデルになっていることです。
バイワイヤリング対応スピーカーには、スピーカー端子が2系統あります。
そのスピーカー端子を高音用と低音用に使い分けることで、ウーファーのムービングコイルから発生する “逆起電力” を、ツイーターに伝えにくくできるんですね。
逆起電力を抑えると高音の濁りが低下し、また低音の締りが良くなると言われています。
スピーカーケーブルを高音用と低音用に分ける際に、もし2chプリメインアンプを使う場合は、スピーカー出力端子は2系統必要です。
ただ2chプリメインアンプでは、スピーカー出力端子が2系統あっても、そもそも高音も低音も同じチャンネルのアンプから出力されていますよね?
実はこれでは、バイワイヤリングの効果は限定的と言わざるを得ません。
※バイワイヤリングに付いて詳しくはこちら ▼
「バイワイヤリングには効果ない?実際に自分で接続してみた!」
そこでポイントになるのが、AVアンプの内部アンプ構成です。
5.1chAVアンプは、モノラルのセンタースピーカー用アンプを除き、4つのアンプを搭載しています。
このアンプ構成を利用して、フロントスピーカー用アンプを高音再生用として使い、スピーカー端子も高音用端子を使います。
そして、リアスピーカー用アンプを低音再生用として使い、スピーカー端子は低音用端子を使います。
これらをそれぞれケーブルでつなぐのですが、これをアンプ側からはバイアンプ化と呼ぶのです。
こうすることで、バイワイヤリング接続したスピーカーの、逆起電力低下の効果を高めることができるんですね。
※バイアンプに付いて詳しくはこちら ▼
「バイアンプの効果とは?またバイワイヤリングとの違いって何?」
そうやって構成すれば、AVアンプを2chピュアオーディオに利用することは意義あること、と言えるのではないでしょうか。
一般的に同一価格ならば、2chプリメインアンプは搭載するアンプは2器ですが、5.1chAVアンプなら5器あることで、数が多い分それぞれのアンプのコストは安いですよね?
なのでその分、AVアンプは音質が劣ると言われます。
ですが、それはあくまで機器1対1で比較した場合の話であり、全てのAVアンプが2chプリメインアンプに劣る訳ではありません。
10万円のAVアンプが5万円の2chプリメインアンプよりも、単純に音質が悪いとは思えないし、バイワイヤリング・バイアンプ化により、同一価格でもAVアンプの方が優ることも考えられるでしょう。
バイワイヤリングとバイアンプ化できることで、AVアンプを、ピュアオーディオコンポの選択肢から外す必要性はないのでは?
さらにAVアンプを使うことで、2chプリメインアンプにはないメリットを見出すこともできるんですよ。
これに付いては、次の頁で述べたいと思います。
AVアンプには2chアンプにはない便利な機能が楽しい
AVアンプには搭載する4つのアンプを使って、バイワイヤリング・バイアンプ化できることを述べました。
このようにすることで、音質の向上が期待できるんですね。
でも、AVアンプの魅力はこれだけではありません。
AVアンプには2chプリメインアンプにはない機能があり、楽しくオーディオに興じることができるのです。
例えば現在人気のAVアンプ、ヤマハRX-V4AとRX-V6Aで見てみましょう。
この2機種はAVアンプとして、基本的にデジタル機器と組み合わせて使うことを前提に設計されています。
そのためそれぞれ光と同軸で、1系統ずつデジタル音声入力端子があります。
つまりCDプレーヤーと、デジタル接続ができるんですね。
デジタル接続できると言うことは、アンプ内部にDAC(デジタル・アナログコンバーター)が搭載されていることです。
しかもそれぞれRCA端子も付いており、アナログ機器ともつなぐことが可能。
と言うことは、CDプレーヤーとはアナログ接続もできるので、デジタル接続とどちらか好きな方を選んで、音が良いと思った方で接続すればよろしいのです。
2chアンプにも一部DACを搭載したモデルがありますが、多くはアナログ接続オンリーであり、デジタル接続したければ外付けDACを使わないといけません。
そう言った点が、AVアンプは有利でお得です。
また、RX-V4A/V6Aに限らず多くのAVアンプは、無線LANを内蔵しています。
つまりネットワークレシーバーとして、家庭用ルーターを介し、インターネットラジオを視聴できるんです。
さらに有料で利用するAmazon MusicやSpotifyなどの、ストリーミングサービスも利用ができます。
しかもRX-V4A/V6Aには、FM/AMチューナーも付いているので、お馴染みのラジオ放送だって楽しめます。
2chプリメインアンプを選んだら、別途FMチューナーを購入しないとラジオ放送が聴けません。
RX-V4A/V6Aにはネットワーク端子もありますから、ルーター経由により有線でPCともつなげられます。
PCに溜めた、ハイレゾ音源を再生することだってできるんですよ。
それにもう1つ、RX-V6Aにはフォノ入力端子も付いています。
レコードプレーヤーをつないで、アナログレコードの再生にも対応してますよ。
デジタル入力バッチリながら、しっかりアナログ入力も忘れていないのです。
このように検証すれば、プリメインアンプじゃなきゃピュアオーディオは楽しめない理由など、あまり見当たらないのではないでしょうか。
まとめ
いかがですか。
AVアンプを使ってピュアオーディオを楽しむことは、音質の上でも機能の上でもメリットがあること、お分かりいただけたでしょうか?
では、ピュアオーディオを楽しむに当たって、どんなユーザーが2chプリメインアンプを選ぶべきなのでしょう。
それはAVアンプ独特の、余分な音の味付けが不要と言う方だと思います。
AVアンプは映像の迫力を助長すべく、やや高音や低音を強調したチューニングが施される傾向にあります。
これを不自然に感じるユーザーも少なからずいるのです。
そんな方はそもそもデジタルサウンドを好まず、あくまでアナログサウンドにこだわることでしょう。
好んで聴く音楽ソースも、アナログレコードかせいぜいCDくらい。
だったら、良い音を増幅することによりコストを掛けた、2chプリメインアンプを選ぶ方が満足度は高いでしょう。
映像にはあまり興味はないけど、インターネットラジオやストリーミングなどデジタルソースは好き。
それでもって、バイワイヤリングやバイアンプにも興味がある方なら、AVアンプを使ってピュアオーディオの世界に浸ってみると良いですね。
ところで、今回のお話を冒頭の知り合いの方にも伝えたところ、納得されたようでした。
さて彼はどんなアンプを選ぶのでしょう?
いずれ尋ねてみたいと思います。
コメントを残す