デジタル時代の今と違い、オーディオ全盛期には、コンポにカセットデッキが仲間に加わっていました。
当時は、FM放送を録音してコレクションするエアチェックが流行しており、この機器が良く売れていたんです。
またレコードは再生を繰り返すと、段々とトラックがすり減って消耗するため、普段はデッキで録音したものを聴き、ここぞと言う時だけ生のレコード音を楽しんでましたね。
カセットデッキに使う媒体はカセットテープなんですが、最近は本当に見かけることがありません。
さてこのカセットテープ、まだお店で売っているのでしょうか?
答えはイエスで、ちゃんと今でも生きながらえているんです。
ではどこのメーカーの製品が手に入り、また録音再生するデッキにはどんなモデルがあるのか、今回探ってみることにしましょう。
カセットテープメーカーは国内ではたったの1社で製品も1種類のみ
1980年代~90年代にかけ、カセットテープに音楽を入れてコンポで聴いたり、ラジカセやカセットプレーヤーを外へ持ち出して楽しむことが、ちまたで大いに流行っていたのは前述の通り。
そのため国内のテープ製造メーカーも多く、Sony・TDK・maxell・AXIAなどが人気ブランドでした。
当時はこれらのテレビCMも盛んに流れ、私は特に、シンガーの山下達郎氏が出演していたmaxellのそれが印象に残っていますね。
これです。▼
協力 加藤浩道さん
カセットテープが製品化された初期は、音楽用として開発されてはなかったので、ノーマルタイプだけしかありませんでした。
しかし、オープンリールデッキよりはるかに扱いやすいことで、のちに音楽用が発売に。
それに対応すべくカセットデッキが出現して、高音質なサウンドが楽しめるようになったんですね。
そしていよいよこの頃から、さらなるテープの高音質化が加速。
ノーマルタイプだけだったものが、高級タイプの素材を使ったものを製品として世に出し、デッキの方もさらに高性能化が進んで、テープセレクターが搭載されました。(多くは自動切換え式でしたが)
ノーマルポジション・ハイポジション、その後メタルポジションも備えたモデルも出たことを、全盛期を過ごした人は覚えているのではないでしょうか。
またテープは、音楽を録音・再生するヘッドと接触しながら走行するため、どうしてもヒスノイズが発生します。
これを抑えるため、ドルビーノイズリダクションと言う優れた技術も加わり、高性能なオープンリールデッキに迫る高音質を実現したのです。
ノーマルからクロームそしてメタルと、何種類も揃ったカセットテープを使い分けて、自分の好きな音でオリジナルアルバムを作るのは本当に素敵なことでした。
カセットテープは今はもう、あまりお目に掛かれませんが、でもなくなった訳ではなく、ちゃんとお店では売っているんですよ。
ただし、高性能なクロームテープやメタルテープは廃止され、手に入るのはノーマルテープのみで、また製造するメーカーもmaxell 1社しかありません。(2025年現在)
なぜそうなってしまったのでしょうか?
その理由を、次の頁で述べてみましょう。
カセットテープが衰退したワケとは?
では、なぜカセットテープが現代において衰退してしまったのかと言う理由ですが、これはカセットに慣れ親しんだ人なら良くお分かりでしょう。
それはCDやMDの登場による、サウンドのデジタル化が進んだことですね。
何と言っても、これら新しいメディアは取り扱いが容易で、曲の頭出しも一発カンタンに行えるメリットがあります。
またこれらは音質の劣化がなく、長期間保存が可能です。
カセットにしろオープンリールにしろ、テープは温度や湿度の変化に弱く伸びたりして、デッキに絡むこともありますからね。
絡んでしまうと最悪、デッキを修理に出さないといけないこともありました。
また、音楽CDソフトはプレーヤーと非接触で再生するため、何度聴いても消耗することがありません。
レコードはアナログですから、針と接触することで段々とすり減っていきます。
それを防ぐため、録音してバックアップする必要があったのですが、それをしなくても良くなったことも、カセットテープが衰退した一因になったでしょう。
もう1つの理由として、FM放送の番組構成の変化にもあると思います。
エアチェックが流行していたころは、録音タイミングが取れるよう番組DJが話をいったん止め、曲をスタートしてくれました。
現在はアメリカンスタイルで、話と曲をオーバーラップさせながら番組を進めることが多く、曲だけを録音するのが難しくなっています。
これは録音媒体がMDに変わっても同じで、これ以降、エアチェックする人はほとんどいなくなったのではないでしょうか。
その後さらに、曲をダウンロードして機器にためたり、曲をエンドレスに聞き流すストリーミングが主流になったことで、録音と言う概念がなくなったことも衰退の原因になるでしょう。
それでもカセットテープが死なないのはナゼ?
カセットテープが衰退した現代ですが、まだまだ死んだ訳ではありません。
それなりに、ちゃんと生きながらえているのです。
その根拠とは、この媒体がグローバルな規格で作られていて、世界中でまだ需要があるからなんですね。
日本だけ見ても、カラオケの練習など稽古事に使ったり、昔、自分で録音して集めたミュージックアルバムを、今も聴いている人たちがいます。
まぁ、多くはパソコンやスマホを使いこなせない高齢者ですが、レコードを知らない若者層にも、その珍しさで注目されているんですよ。
事実、家電量販店や通販で、多くのラジカセが販売されていることでも分かります。
操作には手間が掛かるものの、誰でも直感的に使えるところが、未だに支持されているんですね。
またテープ自体のデザインやカラーが可愛いと、イベントの記念品として音が録音された状態で配られることもあり、受けが良いのだとか・・・。
さすがにオーディオコンポの機器で使うファンは少ないですが、一定数愛好家は存在していますから、カセットデッキを販売している国内メーカーも1社だけあるんです。
それはTEACで、そのモデルとはダブルカセット仕様のWー1200。
もうクロームやメタルなど高性能テープはないし、かつて搭載されていた、ドルビーノイズリダクションシステムもない中で本機は売られています。
ですが、ロジックコントロールシステムを採用して操作性は良いし、TEAC独自のノイズリダクションシステムを搭載して、ノイズの少ないクリアなサウンドが楽しめるのは昔のまま。
ただ、アマチュア用に開発された本機は、最近製造が中止されてしまったようで、メーカーや販売店にある在庫品しか手に入らない状態です。
その代わり、同社の業務用ブランドTASCAMには、202MKⅦとして製造販売されているので、興味のある人はそちらを覗いてみると良いかも知れませんね。
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まとめ:カセットテープは衰退しても当分消えることはなさそう
カセットテープはデジタル時代の今となっては、決して需要が多いものではありません。
しかし、あのデジタル媒体であったMDが、完全に消えてしまったのに未だに生きながらえているのは、グローバルな規格で開発され、世界的にこれでなければと言う声があるからでしょう。
この古典的なメディアに未来があるとは思えませんが、レコーダーを取り出し録音したら、サッとその場でスピーカーで再生できる手軽さは、他の機器では代替できません。
昔のHi-Fiな音で録音したテープが残っているオーディオファンの方なら、懐かしんで、カセットアルバムを聴いてみるのも楽しいのではないでしょうか。
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