音楽を聴くオーディオメディアとして、イヤホン・ヘッドホンを使うことが現在は浸透しています。
昔のオーディオブームの頃からコンポを揃えていた方々は、多くがずっとスピーカーで鳴らしているのに、今の若い世代の方々はそうではないんですね。
イヤホン・ヘッドホンは、昔はオーディオコンポの1つと言うより、アクセサリー品として捉えられていました。
なのでアマチュア用なら、価格はせいぜい2万円~3万円くらいが限度でした。
ですが、現在は10万円越えのモデルがザラにあり、立派にコンポの1つとして存在しているのです。
実際に試聴してみると、どれも確かに音は良い。
なのでイヤホン・ヘッドホンが、再生機器の主流となるのも理解できます。
ですが、それでもスピーカーには、これらにはない大きな魅力があるんですね。
今回は「イヤホン・ヘッドホン vs スピーカー」と題し、両機の音質の違いと、これらはどのように使い分けるのがベターか、私の意見を述べてみたいと思います。
そもそもなぜ若い世代にイヤホン・ヘッドホンが浸透した?
ピュアオーディオ機器は、プレーヤー(音の入口)⇒ アンプ(音の増幅)⇒ スピーカー(音の出口)の3つが基本です。
これは、オーディオ全盛のアナログ時代までは、当たり前のことでした。
特に、音質の違いを最も感じることができるのはスピーカーで、大小様々な大きさや構造の違いで、あらゆる音色を楽しむことができます。
なので当時は、普段音楽を楽しむのはスピーカーを通してであり、ヘッドホン等を使うのは深夜など、大きな音が出せない場合だけのことだったのです。
その後オーディオブームが去り、オーディオを趣味として続けたのは、一定数の限られた人たちだけになりました。
一般の若い世代の人たちの興味は、インターネット・ゲーム・アニメの方へと変わってしまったのです。
その後、2008年に起こったリーマン・ショックで世界経済は低迷。
最も消費意欲の強い若者が、思うように買い物ができなくなってしまいました。
さらに日本では住宅事情が変化、以前と比べて一戸建てよりも、高層マンションに住もうとする人が増えて行ったのです。
マンションに住む人が増えたと言っても、音楽好きな人は相変わらず多く、決して音楽を聴くことをやめてしまった訳ではありません。
でもマンションのような集合住宅では、オーディオコンポをガンガン鳴らしては、近所迷惑になりますよね?
そこで、大好きな音楽を今まで同様に楽しむ方法として、イヤホンやヘッドホンの利用を考えたと言う訳です。
これらを使えば、家族にも気兼ねなく音楽や動画を楽しめるし、需要が増えればメーカーも、安価でより音質の良いモデルを開発します。
安くても高音質なイヤホン・ヘッドホンが市場に出回ったことで、次第に音楽を聴くならスピーカーではなく、これらを使うことが常識として若者を中心に浸透したのです。
イヤホン・ヘッドホンの音質に一旦慣れてしまえば、部屋の中ではかさばってしまうスピーカーなど、買い求める人が減ってしまうのは当たり前のことと言えるでしょう。
イヤホン・ヘッドホンとスピーカーの音はどう違う?どちらが良い音?
では、イヤホン・ヘッドホンとスピーカーとでは、音質はどう違うのでしょうか?
またさらに、どちらが高音質なのかも含めて検証してみましょう。
これは実際に聴き比べてみれば、誰でも分かると思います。
イヤホン・ヘッドホンでは、音を再生する振動版が直接鼓膜を震わせます。
なので、ダイレクトに再生音源の音質を感じ取ることが可能です。
左チャンネルにピアノ、右チャンネルにギターを録音した音源を聴けば、これらがハッキリ左右に分かれて聞こえてきます。
また、それぞれのチャンネルにノイズも一緒に入っていたら、それもそのままストレートに聞こえて来るでしょう。
つまりイヤホン・ヘッドホンで音楽を聴くと、性能の良いモデルなら、忠実に音源の音質で耳に入ってくる訳ですね。
ただどちらも耳を塞いでしまうので、閉塞感を感じてしまい、人間の耳には何か不自然に聞こえるに違いありません。
そこで、その不自然さを少しでも解消するために、ヘッドホンではオープンエアタイプと呼ばれる、外部の音を遮断しないモデルも発売されています。
外の音が耳に入ってしまうとそれが障害となり、音源がやや聴きづらくなってしまう傾向がありますが、聞こえ方は自然に近付きます。
高音質な音源を聴けば、そのまま高音質に再現してくれるし、雑な録音の音源を聴けば、そのまま悪い音質として聞こえて来るのが、イヤホン・ヘッドホンの特徴ですね。
一方スピーカーは、音源を再生して耳に届くまで、一定の距離があります。
そのため再生音が部屋に反響しながら聞こえることで、本来の音とは少し違った音質となって、耳に入ると思います。
反響があるせいで、音源に入っていたはずのノイズが打ち消されてしまい、耳まで届かないこともあります。
現実的に実際の音源とは少し違った音として届く訳ですが、ところが人間はこれを、普段自然な音と捉えているんではないでしょうか?
野鳥のさえずりも森の中で聴くと、とても心地良い声として感じますが、これをほとんど反響のない場所で聴くと、案外そっけない声だと捉えることでしょう。
つまり普段の響きのある音が、本来の音・心地良い音、つまり良い音として我々は聞えているのです。
これはスピーカーに例えても同じ。
あなたがもし、ベースの重低音が大好きな方と仮定しましょう。
重低音はもちろん耳でも感じることはできますが、床なんかも震わせて、身体でそれを感じることがあると思います。
そしてそれを、快感と感じるのではないでしょうか?
イヤホン・ヘッドホンでは、これを耳以外の身体で感じ取ることはできません。
そこがイヤホン・ヘッドホンとスピーカーの、音の違いなんですね。
私は、そんなところがスピーカーの魅力だと捉え、いつもイヤホン・ヘッドホンばかりを使っているリスナーに、スピーカーの使用をおすすめしています。
じゃあ、イヤホン・ヘッドホンよりスピーカーの方が良い音がするのか?と問われれば、決してそんなことはありません。
ただ、スピーカーでしか味わえない空気感や響きは魅力的なので、イヤホン・ヘッドホンでしか音楽を聴かない人にも味わって欲しいのです。
どっちが良い音なのか決め付けることは、なかなかできません。
どちらも優れた機器なら、どちらも良い音がすると私は思っています。
イヤホン・ヘッドホンとスピーカーの使い分けはどうすれば良い?
私は前頁で、イヤホン・ヘッドホンとスピーカーではどちらが良い音なのか、決め付けることはできないと述べました。
どちらが正確な音かと問われるなら、それが優れた機器ならば、イヤホン・ヘッドホンの方ではないかと答えます。
しかし、どちらが自然な音で聞えるかと訊かれたら、スピーカーの方が上を行っていると断言しても良いでしょう。
とは言うものの、所詮オーディオは趣味の世界のもの。
どちらが好きで、そしてどちらで楽しもうが、その人の自由です。
私はスピーカーの音質の方が、イヤホン・ヘッドホンより魅力的と思っていますが、決してこれらを否定する訳ではありません。
イヤホン・ヘッドホンも高音質なモデルがあり、これでずっと聴いていたいと感じることもあるからです。
そこで私からの提案です。
住宅環境の都合上など、どうしてもスピーカーが使えないリスナーなら仕方ありませんが、そうではないのであれば、ぜひスピーカーで音の響きを味わって欲しいです。
音の響きや空気感は明らかにスピーカーの方が上。
深夜にガンガン音楽を聴くのなら、当然イヤホン・ヘッドホンを使うべきですが、多少音が外に漏れても問題のない環境にお住みなら、聴かないと言う手はありません。
なので、その時の気分次第で両方を使い分けるのはいかがでしょうか。
同じ曲を違う音質で、二度美味しくいただけますよ。
私も夜はさすがにスピーカーで、部屋を響かせながら音楽を聴く気にはなれません。
そんな時や、響きを抑えたモニター的な音質で聴きたい時は、大げさにコンポを使うのではなく、ウォークマンで静かにサウンドを楽しんでいます。
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