現代のオーディオアンプは、トランジスタを使ったものが多いのですが、1960年代以前のそれは真空管を使ったものが主でした。
トランジスタが開発されてからは、この方が電力が少なくても大きな出力が得られることで、真空管式がすたって行ったのです。
ただトランジスタ式では得られない、独特の音質が一部のファンには人気で、高額ながら現在でも真空管アンプは製造されています。
そんな中、このところ低価格でも真空管の音が楽しめる製品が、中国のメーカーを中心に製造され日本でも人気です。
その人気商品の1つに「Douk Audio P1」があります。
驚くほど低価格でありながら、手軽に真空管の音質を堪能できるプリアンプです。
今回は、このDouk Audio P1の魅力をユーザーレビューをたどりながら、その使い方や使い心地等を評価してみたいと思います。
Douk Audio P1の特徴と面白い使い方
まず真空管アンプとしてDouk Audio P1に興味を持ったら、本機の特徴や機能を理解しておくと良いと思います。
本機はオーディオアンプと言っても、基本的にプリアンプです。
つまり、プリメインアンプのようにメインアンプ部を持っていないので、スピーカーを鳴らすためには、別途にパワーアンプを必要とします。
「何だ、それじゃ使えないな」と、ガッカリしてしまうあなたもいるかも知れませんね。
でも本機には音源入力として、RCAアナログ端子とPCと接続できるUSB端子、それからスマホ音源を再生可能なBluetooth5.0入力にも対応しているんです。
出力はRCAアナログ端子と、ヘッドホン端子を装備。
大きなボリュームツマミと、バス・トレブル2つのトーンコントロールも付いています。
これらの機能でプリアンプとして使えるだけでなく、PC音源をアナログに変換するUSB-DACとして使うことが可能です。
またヘッドホンをつなげば、ヘッドホンアンプとしても利用できます。
しかも出て来るサウンドは、デジタルと真空管のハイブリッドサウンドですよ。
このハイブリッドサウンドをスピーカーで聴くなら、パワーアンプが必要なのは前述の通りですが、手持ちのプリメインアンプにメインイン端子があれば、パワーアンプは不要。
もしメインイン端子がなくても、AUXなどRCA端子につなげば大丈夫です。
その場合は本機のボリュームとプリメインアンプのボリュームとで、音量バランスを取ります。
後は普段の音量調整は、プリメインアンプ側で行うようにして下さい。
本機にはトーンコントロールがありますが、プリメインを使う場合は音質の劣化を防ぐため、トーンスイッチはOFFにした方が良いでしょう。
本機の面白い使い方としては、PCから入力した音源をオーディオアンプで再生するのではなく、アンプを内蔵したアクティブスピーカーを使用することです。
デスクトップ上に本機とPC、そしてアクティブスピーカーを設置すれば、真空管を使った個性的なPCオーディオを構築することができますよ。
これ、とても面白いオーディオの楽しみ方だと思いませんか?
本機は手のひらサイズのアンプですから、デスクトップで邪魔にならないのもメリットですね。
Douk Audio P1を使いこなすために、真空管の特性を知っておこう
P1を使いこなすためには、真空管の特性をある程度知っておく必要があります。
真空管アンプの音質の特徴は、暖かみのあるまろやかな音であること。
一方デジタルの音質は、シャープで解像度の高い、ある意味冷たい音です。
この2つが融合して出てくる音はどんな音か、興味あるところですね。
どんな音になるのかは、組み合わせる機材によって違うので一概に言えませんが、その効果を発揮させるための知識を述べましょう。
真空管の実力を十分に出すためには、トランジスタアンプより長くウォーミングアップが必要です。
トランジスタは電源を入れすぐに再生しても、不自然な音はしません。
しかし、真空管は電源を入れ10分以上そのままにしないと、歪の多い不快な音を再現してしまいます。
これは決して故障ではないので、良く覚えておく必要があります。
それから時間が経つに連れ、アンプ本体が熱くなります。
熱でツマミやスイッチが触れなくなることはありませんが、真空管はヤケドをするほど高熱になるので、駆動中は決して触らないように。
そのため本体は、デスクトップなど放熱の良い場所に設置した方が良いですね。
オーディオラックの奥の方などへ置いたりすると、熱がこもって故障の原因になります。
それから本機は、LEDで真空管の周りを照らすことができますが、これとは別に真空管自体が赤く光ります。
ただし個体によって光り方が違い、同じ真空管なのに、左右で光る強さが異なる場合があります。
これは管の不具合ではないので、このままでも音には影響ありません。
また、どちらも思ったほど光らない場合もありますが、これも故障ではありません。
真空管と言うものは実は個体差の大きな部品で、同じ品番の管で交換したのに、音質が違って聞こえることもあるんです。
この特性を上手く利用して、本機に適合する真空管なら違うものと交換して、音質の違いを楽しむことが可能です。
例えば本機には、中国製の6J5と言う品番のものが付属するのですが、これをアメリカ製の5654Wと交換すると、元気なややドンシャリ気味の音に変化するようです。
さらに本機を使ったら、”サー” と言うホワイトノイズが発生したと言う声も聞きますが、この場合、真空管を交換したら出なくなったとのこと。
こうしたトランジスタにはない音の変化を楽しめるのが、真空管アンプの特性・魅力と言えます。
では次に、実際にP1を愛用しているユーザーの皆さんは、本機の音質や使い勝手にどんな感想を持っているのでしょうか?
いくつかレビューを集めたので、次の頁で確かめてみて下さい。
Douk Audio P1のユーザーレビュー
★「付属球で10時間ほど鳴らした。真空管が温まってからは真空管らしいレンジ感はスポイルされているものの、奥行き感のある聴きやすい暖かい音になった。真空管を5854Wに交換したところ、交換直後はかなりノイズを拾っていたが、温まってしまえばクリアな音になった。付属球と比較すると、少しレンジ感が出てきらびやかな音になった。ネットワーク機材等を至近距離に置いているが、条件がととのえばノイズも拾わないようだし、設置自由度も高いと思う。」
★「肝はやはり真空管を通したアナログの音で、柔らかみや丸みが出てくる(感じ)が楽しめる。オーディオとは人の感じや思い込みのものであって、そういう趣味だと割り切れば、この価格でそれが手に入るのはとても素晴らしい。手元で低域・高域のコントロールダイアル操作しながら音をいじる感覚はデジタルでは得にくいもので、曲による音量感や定位感、高域・低域の周波数の違い、等々を調整しながら真空管による軟らかく膨らみのある音楽を1曲ずつ合わせ込んでいく行為は、単に音楽だけでなく “音を聴く” という、かつてのオーディオの楽しみを再体験させてくれるものだ。」
★「デザインが良く機能も充実しているので購入したが、高低音調整の質感が軽すぎるのと真空管の座りが緩くぐらつく。Bluetoothは最初のみ使用できたが、二回目でペアリング不能。他機種で試すも接続不能だった。以前もトラブルに遭遇して基盤を交換して頂くも二回目以降使用できず、Bluetoothの使用は諦めた。USB接続でPC専用に直接つないでいるが、音質は価格以上だと思う。」
★「アンプとDACの間にトーンコントロールが欲しくて、この真空管プリアンプを購入した。毎日5時間以上鳴らしているが、耐久性も問題ない。DACとアンプをXLRコネクター(キャノンコネクター)で繋いだ音と真空管プリアンプを通したものと聴き比べを行ったが、圧倒的に真空管プリアンプを通した音の方が軟らかく味の有る音で自分好みになった。この真空管プリアンプはDAC機能とBluetoothも装備しているが、DACはオマケかな?Bluetoothは問題無く繋がる。肝心のトーンコントロールも音に変化を感じられ、問題無い。」
Douk Audio P1の評価
ここからは、私が以上の情報を基にP1の評価をしてみましょう。
真空管に興味があって音を聴いてみたいと思っても、本格的な真空管アンプは高価で手が出ない、とあきらめていたあなたもいるかも知れませんね。
ところが中国製品を中心に、価格の安い真空管アンプが最近出回るようになったのは嬉しいことです。
安価で手軽に真空管の音が楽しめるアンプには、プリメインアンプもありますが、本機はメインアンプを持たないプリアンプです。
パワーアンプを別途に用意しないと、スピーカーシステムを鳴らせない不便さはあるでしょう。
しかし、真空管を使ったUSB-DACを使いたいユーザーや、真空管式ヘッドホンアンプが欲しいユーザーには本機がとても重宝します。
それにしても、本格的な真空管アンプに手を染める気はないけど、お金を掛けずに真空管の音を聴いてみたいユーザーにもピッタリの製品に違いありません。
価格からして、耐久性が十分かちょっと気にならなくもありませんが、メーカー保証は1年あるし、お遊び感覚で真空管サウンドを体験するなら、それほど気になることはないでしょう。
それに、後から真空管を別のものに交換して音の違いを楽しむのも、トランジスタアンプにはできない芸当です。
購入する際にあまり悩むことなく、すぐに手に入れられる気軽さが、P1の最大の魅力と言っても良いかも知れませんね。
前述のように、個性的なPCオーディオを始めるきっかけに本機を利用するのも、決して悪くないと言えるのではないでしょうか?
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