オーディオ不況が叫ばれて久しい昨今ですが、長年コツコツと機材を集めて来た人たちで、細々と業界が持ちこたえている感じがあります。
新しいものに敏感な若者は、音楽を聴くことは好きなはずなのに、オーディオコンポ(機材)には新製品が登場しても、あまり興味を持たないようです。
これは単に、時代と共に趣向性が変化したからなんでしょうか?
本当のところはどうなのか、私としても若者に、もっとオーディオを趣味にして欲しい思いがあります。
今回は、若者がオーディオを趣味としない原因と、これから目を向けてもらうためにはどうすれば良いのか、考えを述べてみたいと思います。
そもそも本当に若者はオーディオに興味がないのか?
私はオーディオを趣味にしてから、かれこれもう30年以上経ちます。
趣味として始めた頃、私の周りではオーディオに興味を持つ人って、結構多かった記憶があります。
現在では、さすがにその人口は減ってしまったものの、それでもいくつもクラブが現在進行形で存在するのを私は知っています。
ただ、そのどれも平均年齢が40歳を超えているのが特徴ですね。
でもそのクラブの中には少ないですが、20代~30代の若者もちゃんと在籍しているところがあるんですよ。
オーディオの楽しさは、決してオジサンたちの専売特許なのではなく、音楽好きな人なら若者だって理解できるのです。
なのに、全体人口では中高年よりずっと少ないのは、なぜなんでしょうか?
それは、若者の趣味趣向の変化だけによるものではなく、別の外的要因にあるのではないかと私は考えています。
それを次頁で述べてみましょう。
昔と違い現代は娯楽要素が増えオーディオ以外に選択肢が多彩になった
日本でオーディオがブームになったのは、1970年代~1980年代、元号で言うと昭和45年~60年くらいのことです。
この頃は高度成長時代で日本は景気が良く、比較的若い社会人でも収入を生活費だけでなく、趣味や娯楽に費用をあてることができました。
男性なら車やオーディオ、女性ならファッションや旅行にお金を費やしていたんですね。
でも、それ以外に夢中になれるメジャーな趣味が少なく、カメラやカラオケなどは少数派でした。
そんな訳で特に男性の場合、車より安く手に入るオーディオを趣味とする人が非常に多かったと思います。
平成に入り21世紀になると、景気は下火になるものの技術が発達し、パソコン・TVゲーム(特に対戦もの)・アニメなどが人気に。
それに拍車をかけたのが、携帯電話(後のスマホ)や、iPodなどの携帯オーディオプレーヤーの登場と言えるでしょう。
これらのように身近な娯楽が増えたことで、あえて趣味をオーディオに限定する必要がなくなり、下火になったキッカケを作ったのだと思います。
バブル景気の崩壊が若者のオーディオ離れを助長した
1990年代に入るとバブル景気の崩壊が始まり、段々と国民の収入に変化が現れ、貧富の差も大きくなります。
当然、同じ社会人でも一番余裕がないのは、20代~30代の若者です。
その流れで趣味の中心は、費用の掛かる車やオーディオから離れ、より身近な存在のパソコンやゲーム・アニメにシフトするんですね。
その後パソコンも安くなり、インターネットの普及で音楽ソフトの購入もネット販売化され、さらにスマホの台頭によって加速するようになりました。
結果、娯楽に使うお金は、これらに多く費やされるようになったことで、高価な車やオーディオ製品は買えなくなってしまったのです。
高いオーディオ製品はなくとも、スマホや携帯オーディオプレーヤーがあれば、音楽を堪能することは可能です。
ネット販売の音楽は、CDやレコードと比べると音質は劣りますが、安く手軽に音源が買えるならイヤホンでの再生でも十分と考えたのでしょう。
増して住宅事情の変化で、家を建てるにも一戸建てより、マンションを購入する人が多くなりました。
マンションの中では騒音の問題で、大きなスピーカーを設置するのは難しいですよね?
なのでイヤホンに慣れ親しんでいる若者に取って、音楽を聴くアイテムはスマホや携帯プレーヤーのままで良く、オーディオ製品の出荷量はさらに低下します。
お金のある年代の人達は、オーディオにこだわるなら一戸建てを購入しますが、家を買えない若者には難しいことです。
このような過程を経て、若者のオーディオへの関心は薄れて来たのでしょう。
条件の揃う若者は今の時代でもオーディオを趣味としている
既述のように以前と比較して、オーディオを趣味とする若者の数は減りました。
でも若くてもオーディオにこだわり、アンプを自作してしまうほどのマニアはちゃんといるんですよ。
子供の頃から機械いじりが好きで、小学生時代にラジオを組み立てたと言う、そんな彼を私は知っています。
彼の自宅を訪れると、立派なオーディオルームに、国内外の機材がずらり並んでいます。
音を聴かせてもらうと、そりゃ金を掛けただけの音質が部屋に広がります。
何を言おうと、私が持っているコンポとは、ケタ外れの価格のシステムですからね。
しかし、どうして若いのにこんなオーディオマニアになれた?と考えると、そこはやはりお金持ちだからなんだろうと思うんです。
結局、金に糸目を付けないでいられる人なら、若者でもオーディオを趣味にすることができるのでしょう。
昔と違い、金銭に余裕のない現代の多くの若者は、オーディオに費用を掛けるより、スマホなどの通信費やTVゲーム代に費やす方を優先するのです。
オーディオに金を掛けなくても、スマホなどがあれば、好きな音楽を楽しむことはできますからね。
若者がオーディオに興味を持たないのは販売店の売り方にも原因がある
若者がオーディオに興味を持たなくなったのは、時代にほんろうされたばかりでなく、別の理由で趣味とすることを諦めたことにもあると思います。
その理由の1つに、販売店の体制があるのかも知れません。
私はたまに商品を目と手で触れるため、家電量販店に出向きますが、多くの店ではまともにオーディオ製品を展示してはいません。
あっても一部のミニコンポか、ホームシアター用の機材ばかり。
しかも展示はされていても、視聴することができない場合もあります。
これでは若者に多い初心者が、オーディオ製品を体感できないですよね?
オーディオコンポが売れ筋ではないとは言え、そもそも商品をまともに置いていないようでは、彼らが興味を持とうとしても持ちようがありません。
商品はエントリークラスから高級クラスまで、色々とラインナップがあるハズなのに、実物どころかパンフレットさえ十分に揃えていない状態です。
商品情報は実店舗ではなく、雑誌やネットで調べろとでも言うのでしょうか?
まれに「〇〇〇〇カメラ」のような大型量販店に行くと、店の一角に専門コーナーを見かけることはあります。
それなりに商品に触れることができ、視聴することも可能です。
ただ対応する店員さんは男性ばかりで、しかも初心者には敷居が高くて近寄りがたい印象の人達が多い。
オーディオにある程度知識があるお客なら良いですが、興味があっても知識のない初心者には、気が引けてしまいような雰囲気を醸し出しています。
それと店内にはミニコンポではない、エントリークラス製品の展示が少ないですね。
予算の少ない初心者なら、店内をじっくり回ることを断念して、早々にスルーしてしまうことでしょう。
マニアやベテランは、高級品の購入が多いのでそうしているのかも知れませんが、一方で初心者向けの機材を揃えたコーナーも設けるべきだと思います。
初心者を大切にすることで、行く末その人がリピーターとなるかも知れないのに、その体制がないように見えますね。
現代では確かにネット通販での購入者は多いですが、中には実物に触れられる販売店での購入を望む人も少なくないのでは?
オーディオ製品は雑貨品ではないので、事前の商品調べや、購入後のアフターサービスの充実を求めるユーザーも大切にする必要があるのです。
若者がオーディオに興味を持たないのはマニアの人たちの態度にも原因がある
若者がオーディオに興味を持たないのは、販売店の体制に原因があるだけでなく、マニアを自称する人たちの態度にも一因があるのかも知れません。
例えば、Yahoo!知恵袋などネット上の悩みサイトには、多くのオーディオの悩みを抱えた人の質問が寄せられています。
その悩みに、真摯なアドバイスが回答されることもある反面、「エッ、そんなことも知らないの?」と言った、質問者を小バカにしたものも見受けられますね。
まるで「そんなことも知らないんじゃ、オーディオを楽しむ資格などない」と言わんばかりの回答です。
多くの質問者は若い初心者と見受けられますが、これでは尻込みして「オーディオなんか興味など持ってやるものか!」と怒ってしまうのではないでしょうか?
オーディオ販売店でも、店員さんとマニアが専門用語を頻発して会話している姿を見たら、ここは自分のいる場所ではないと思ってしまうかも知れませんし・・・。
オーディオマニアたるベテランも、かつては自分も初心者だったハズ。
もっと温かい目で、これからオーディオを趣味にしようとする人に接する必要があるでしょう。
販売店の店員さんも、いきなりマニアックな接客をするのを避け、つたない来客者にはそれ相応の製品をすすめるべきです。
多くのメーカーは、初めてコンポを買う人向けの製品もちゃんと用意しているので、それを見極めた上での商談をして欲しいですね。
初心者の若者に対してマニアが優しく接し、販売店も敬意を表して対応するなら、この先のオーディオ文化は少しは発展して行くだろうと私は思っています。
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