CD(コンパクトディスク)は、今では、主たる音楽ソースとしてトップの座を下りてしまっていますが、依然、多くの音楽ファンに支えられている、重要なメディアであるのは変わりません。
何と言ってもデジタルならではの高音質で、持ち運びや取り扱いが楽なのも大きな魅力。
それと、アナログレコードとは違いピックアップと接触しないので、摩耗することなく、音質や品質を半永久的に維持できるとも言われています。
が、実はCDもメンテナンスした方が良いこと、もしかしてあなたはご存じないんじゃありませんか?
正直なところ、私もこれまで、時々ブロアでホコリを払うことしかしていませんでした。
そんな矢先、つい先日のことですが、私がお世話になっているオーディオクラブでの視聴会で、メンバーのTさんから読み取り面(裏面)をクリーニングして、音質を向上させる方法があることを教わったのです。
今回は、あなたにその方法を披露するとともに、自らそれを実践した結果を述べてみたいと思います。
CDをIPAとマイクロファイバークロスでクリーニングする
CDをクリーニングして音質を向上させる方法とは、IPA(イソプロピルアルコール)で洗浄すると言うこと。
IPAを読み取り面一面に塗布した後、マイクロファイバークロスのような柔らかい布で拭き上げるのです。
拭き上げは、ディスクの中心から外周に向け直線的に行います。
レコードのクリーニングのように、円を描くように拭いてはいけません。
これを間違えるとピックアップエラーが起こり、再生不可になる恐れがあるんですね。
そして実際に、先ほどのTさんにクリーニングする前と、した後の再生音を聴かせてもらってビックリ。
まるで1枚ベールが剥がれたように、全域で音がクリアになったんです。
CDは、透明なポリカーボネート樹脂の上に反射層と保護層があり、レーザーが反射して信号を読み取って音を再生します。
読み取り面に指紋や皮脂が付いていると、その油分が光の透過を妨げ、ホコリやアカがあるとレーザーを乱反射させてしまいます。
それらをIPAが除去することによって、CDが持つ本来の高音質を発揮できるのです。
IPAは、一般にプラスチック板の洗浄などに使われるアルコール薬剤です。
CDも、ポリカーボネートと言うプラスチックで作られていますが、しかし反射層と保護層の表面加工がなされています。
なので、そのままダイレクトにIPAを使ってクリーニングして、果たして大丈夫なのか私は疑問を持ち、ネット検索で検証してみることにしました。
CDのIPAクリーニングは実は色んな意見がある
IPA(イソプロピルアルコール)は油分の除去に優れており、CDの製造時に付けたシリコンや皮脂を落とすのに有効とされています。
それは名古屋市に本社を置く、メーカーの1つである三協化学のサイトでもうたっている通りです。
オーディオ愛好家のサイトでは、音質がハイレゾのように良くなったと言う体験談も見受けられます。
こちらの動画では、実際に音質が向上したことを比較映像にしていますよ。
協力 喜古さん
しかし、もっと別のサイトを覗いてみると、100%推奨できるとは言い切れないと述べたものもありました。
例えば、「アルコールは高純度のIP表示があるものを使わないと効果がない」とか、「レーベル面にかけると印刷が溶ける恐れがある」との注意喚起をしているブログがあります。(エクスクルーシヴのオーディオ隠れ家)
また、「円を描くようにアルコールで拭くのは避けた方が良い」「水道水ですすいでから乾かすべき」との実践的なアドバイスを記したものも。(Raddit)
これらの事例からは、IPAクリーニングに手応えを感じるものの、成功例が統一的ではない実情が見えます。
ならばと言う訳で、私が実際にIPAを購入して、その効果を試してみることにしました。
CDのIPAクリーニングで音質が向上するのは事実だ
今回私が購入したIPAは、ビーエヌ社の純度99.9%の容量1リットルのもの。
CDのクリーニングには、アルコール純度の高いものが必要と言うことで、この商品を選択しました。
また、100円ショップでマイクロファイバークロスを買ったので、これで読み取り面を拭きます。
そして、CDの信号を確実にキャッチするためには、CDプレーヤーのピックアップレンズを綺麗にする必要もあるでしょう。
そこで、エレコムのレンズクリーナーCD/DVD用レベル3も同時購入。
この商品は、通常のレンズクリーニングだけでなく、ピックアップエラーが起こって再生ができなくなった時に、それを復活させる機能もあるんです。
さて、いよいよクリーニングを行うのですが、まずカメラに使うブロアで軽くホコリを払った後クロスに数滴原液を垂らし、先述のように放射線状にまんべんなくIPAを塗布しました。
それからクロスの乾いた面で、ゆっくり丁寧に拭き上げます。
2~3分CDを放置したらプレーヤーにセット、再生に入ります。
直後に、音質が変化したことを確認できましたよ。
サラ・ヴォーンとオスカー・ピーターソンが共演した「Teach Me Tonight」と言う曲では、私のオーディオコンポでも歌詞が良く聞き取れるし、ピアノのアタック音も鋭くなった気がするのです。
作業前と作業後を比較してみると、ハッキリクッキリして、一歩前に音が出てくる感じが分かりました。
では、今度はCDではなくCD-Rではどうでしょうか?
気になるので、同じように試してみましたよ。
試したのは、ジャズバイオリニストの寺井尚子の「Jazz Waltz」ですが、結果は同じで、バイオリンの高音域のツヤがリアルに聞こえ、松ヤニが飛び散るかのような雰囲気も感じ取れました。
オーディオ的に例えれば、CDプレーヤーとアンプを直接接続した音と、外付けDAC(デジタルアナログコンバーター)を介し、アンプと接続した音ほどの違いがあると言えば分かりやすいでしょう。
まとめ
CDの音質向上のために、IPA(イソプロピルアルコール)を使ったクリーニングが有効なことを、実際に私が試して実証してみました。
しかもCDだけでなく、CD-Rでも効果があることも分かりました。
この結果の条件は高純度のIPAを使い、拭き取りは読み取り面をキズ付けない、マイクロファイバークロスのような柔らかい布を使うこと。
その上でCDレンズクリーナーも一応使ってみましたが、元々レンズに不具合があった訳ではないので、どれほど効果があったのかは実感できませんでした。
今回購入したCDレンズクリーナーは、きちんと音が再生できるうちは付属の液剤なしで数回クリーニングすれば良く、再生が途切れたりディスクの読み込みエラーが起こった場合に、薬剤を使って処理すれば良い商品のようです。
ところでCDのクリーニングは、どれくらいの間隔で行ったら良いのでしょうか?
それは私の考えでは、指紋をベタっと付けるなど明らかな汚れがない限り、1度だけで良いと思います。
見た目、綺麗なCDでもIPAでクリーニングすると音が良くなるのは、主にCD製造時に塗布されるシリコンが除去されるためなのでしょう。
実は私は数年前まで、プラスチックプレート関連の仕事をしていたのですが、プレート表面の汚れを取るためにIPAを使っていました。
しかし汚れたらその都度ではなく、汚れて見栄が悪くなった時だけ使っていたのです。
IPAは製造メーカーでも、プラスチックのクリーニングに向いているとうたってますが、何度使用しても大丈夫とは言っていません。
プラスチックの業界でも、やたらと使うことはないのです。
増してCDは表面に反射層や保護層などがあり、リスクは高いはず。
なので1度クリーニングしたら、明らかな音質低下が疑われる汚れが付かない限り、IPAは使わない方が無難でしょうね。
あなたもCDの音質向上に興味が湧いてきたら、試してみてはいかがでしょうか?
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